株式会社QDレーザ(6613)

laser 注目銘柄

今回は株式会社QDレーザに関してザックリまとめてみました。東証グロース市場に上場している新興小型株です。個人投資家には割と人気の銘柄かも知れません。

QDレーザのホームページは以下になります。

QDレーザ 人の可能性を照らせ。
QDレーザは、シリコンフォトニクスに最適な量子ドットレーザ等のレーザ製品や、半導体レーザ技術の応用による網膜投影機器を開発・製造・販売しています。

QDレーザってどんな会社?

QDレーザは2006年に富士通研究所からスピンオフする形で設立されました。保有するさまざまな半導体レーザー技術を基に、最先端のレーザーデバイスを顧客に供給しています。2010年には世界で初めて量子ドットレーザーを実用量産化に成功。シリコンベースの半導体回路に光信号回路を融合するシリコンフォトニクス分野でも大きな存在感を持っています。

代表取締役社長は菅原 充社長で東京大学大学院を卒業後、富士通研究所に勤務。その後東京大学特任教授を経て現職に至ります。数々の受賞歴がある技術・研究畑の社長ですね。

また量子ドットの研究で有名な東京大学の荒川 泰彦教授を顧問に迎え共同研究を行っています。

2021年2月に東証マザーズ(現東証グロース)に上場を果たしました。

QDレーザ(量子ドットレーザ)ってすごいの?

そもそも社名の由来にもなっているQDレーザ(量子ドットレーザ)って何がすごいのでしょうか?騒ぐほどのものなのでしょうか?

そもそも半導体レーザとは?

そもそも半導体レーザとは下の図にあるように半導体に電流を流すとレーザ光を発する素子のことです。

レーザ発振器は①媒質②励起光源③共振器の3つの部位から構成されていますが、①の媒質の種類によって固体レーザ・液体レーザ・気体レーザ・半導体レーザに分かれます。媒質の部分に半導体が使われているのが半導体レーザですね。QDレーザももちろん半導体レーザです。

QDレーザ決算資料より

QDレーザ(量子ドットレーザ)とは?

量子ドットとはナノスケールの半導体結晶のことを指します。通常、2~10 nmの直径で、10~50個ほどの原子で構成されています。

量子ドットレーザとは半導体レーザのうち、前出の図にあった活性層に半導体のナノサイズの微結晶である量子ドット構造を採⽤した半導体レーザのことです。既存の半導体レーザと⽐較して温度安定性、⾼温耐性、⻑期信頼性、低雑⾳性に優れるという特徴があります。また消費電力も低く、省エネという点からも注目されています。

少し分かりにくいですが、左の図では量子レーザ素子を拡大すると量子ドットがちりばめられているのが分かります。

(QDレーザ決算資料より引用)

QDレーザ(量子ドットレーザ)って何に使うの?

「量子ドットレーザって何に使うの?」という疑問が湧いてきますが、下の図のように様々な領域への応用が期待されています。既存の半導体レーザだけで市場規模は7700億円くらいと言われており巨大な市場があります。量子ドットレーザは消費電力も非常に少ないので「省エネ」という観点からも今後は採用が増えていくことが期待されています。

下図のQDレーザ展開領域の中で具体的に事業の進展がみられるのが、
トヨタやデンソーとの共同特許で時々話題になるLiDAR
メオチェックで既にタクシー業界等に導入されている眼底検査事業
AIO Coreからの受注で動き出したシリコンフォトニクス
CEATEC等で実物の展示がなされている網膜投影によるスマートグラス
の4つです。

進歩の速い分野なのでこれからも展開領域が増える可能性もあるでしょうし、7700億円の既存半導体市場よりも大きく市場が拡大する可能性は十分あるのではないでしょうか?

QDレーザ決算資料より

QDレーザの販売する半導体レーザの特徴は?

QDレーザの販売している半導体レーザの特徴は①アレンジの自在性②高速パルスの安定性であるということです。

①アレンジの自在性・・・任意の波長の半導体レーザを用途に応じて提供できる

②高速パルスの安定性・・・時間・スペクトルのノイズが少ない安定したレーザ

QDレーザの強みは?

QDレーザは以下の①~⑥の領域で独自の技術を多数保有しています。


①レーザ設計
②半導体結晶成長
③量子ドット
④回折格子
⑤VISIRIUMテクノロジー
⑥小型モジュール

またセミファブレス体制を敷くことで固定費を抑え利益を出しやすい製造体制をとっていることも強みとしています。

QDレーザの事業領域は?

QDレーザは主に2つの領域で事業展開しています。半導体レーザーデバイスレーザー網膜投影の2領域です。それぞれを以下に解説していきます。

半導体レーザーデバイス

半導体レーザーデバイスには

①DFBレーザ
②小型可視レーザ・小型マルチカラーレーザ光源
③量子ドットレーザ
④高出力FPレーザ

の4つがあります。

DFBレーザ

  • 用途:レーザ加工・計測・LiDARなど
    回折格子により選択された波⻑のみを増幅。高出力・高安定。豊富なラインナップで、幅広い用途や求められる性能に応じた最適な波⻑を提供可能。
  • 豊富な波⻑ラインナップ:
    1030, 1053, 1064, 1080, 1120, 1180nm
  • 1nm単位で提供可能
  • ピコ秒単位の短パルス動作実現により非加熱加工が可能
  • 安定性が高くノイズが少ないため高精度の加工や計測が可能
  • この波⻑帯のDFBレーザを製造できる企業は世界で数社のみ

小型可視レーザ・小型マルチカラーレーザ光源

  • 用途:メディカル
    緑、⻩緑、橙⾊の可視レーザ。特許技術により、他社では製造できない小型デバイスを実現。
  • 波⻑は532, 561, 594nmをラインナップ
  • 細胞の計測を行う「フローサイトメータ」「セルソータ」「レーザ顕微鏡」「眼底検査」などに使用
  • 直接発光する半導体レーザがない波⻑域
    2倍の波⻑のレーザを作り非線形光学結晶で波⻑変換して可視光を実現
  • 独自の半導体レーザチップと波⻑変換結晶のパッケージにより小型化を実現
  • ノイズが少なくパルスの安定性にも優れる

量子ドットレーザ

  • 用途:光通信・LiDAR・Siフォトニクスなど世界で唯一、当社のみが保有する技術によって製造。優れた温度安定性で、世界最高動作温度を実現。
  • 波⻑は1200-1330nmをラインナップ
  • シリコンフォトニクス(光配線:光コネクタ・チップ間通信、LiDAR)が量子ドットレーザによって進化
  • QDレーザのみが保有する量子ドット量産技術によって実現
  • 150-200℃の高温環境下でも動作可能
    ※通常の半導体レーザの動作限界温度は80-100℃
  • サーバ、無線基地局、自動車など高温になる環境での使用が可能
  • 優れた反射戻り光耐性を有し、部品点数削減による小型化に最適

高出力FPレーザ

  • 用途:パーティクルカウンター・レベラー・マシンビジョン・工場用LiDARなど
    高信頼・高品質のCW/ナノ秒パルス高出力レーザ。使用条件・少量対応等顧客の要求に合わせたサービスの提供。
  • 波⻑は640-940nmをラインナップ
  • CW-高出力ナノ秒パルス駆動で、幅広いセンサ用途に対応可能
  • 顧客ニーズ(パルス・光出力・信頼性・波⻑・制御法等)をヒアリングしそれに最適な製品・ソリューションを提案
  • 少量生産にも対応可能

レーザアイウェア

レーザアイウェアに関しては科学技術振興機構の資料によると

「このレーザアイウェアの世界市場として、2020年ごろには約1500億円が見込まれるほどだ。」

https://www.jst.go.jp/seika/bt123-124.html

とのことで市場規模は現時点でもそれなりに、今後の成長を見込むともっと大きなものになるかもしれませんね。

ライバルは?

QDレーザのライバルは菅原社長も決算説明会で仰っている通り「事業が多方面に渡るため色々と考えられる」と言えると思います。競合の一例をいかに挙げておきますがこれ以外にも競合となる企業は存在するといえます。

シリコンフォトニクス・LiDAR・光通信等

・Intel ・IBM ・Tower Semiconductor ・Quintessent

バイオ

QDレーザはフローサイトメトリーやセルソーターで大手のベクトン・ディッキンソン株式会社(BD社)へレーザを納品しています。

QDレーザはバイオ領域ではシェアを伸ばしており、最大手のBD社に採用されていることで今後さらにシェアを拡大していくかもしれません。2023年時点でQDレーザの決算補足資料には「5年後にはバイオメディカル装置用光源の業界シェアで20%を目指す」とあります。

レーザ網膜投影

主にXR(AR/MR)関連の機器を開発している企業と競合することになるのではないでしょうか?ただし資金力ではかなわない大企業ばかりですので、QDレーザの技術を提供する形で業務資本提携等の道を探るのが妥当ではないかと考えますがどうでしょうか。

・Apple ・Meta(FaceBook) ・HTC ・SONY

ちなみに著者は昨年(2022年)のCEATECに参加してTDKのブースでQDレーザの網膜投影ARグラスを体験してきました。
「見ようと思わなくても見えてしまう」今までにない不思議な感覚でした。体験する機会があれば是非試してみることをお勧めします。当日TDKブースにはARグラスを試そうと行列ができており、スタッフの方々も反響の大きさに驚いていました。


質問したところ2022年時点の課題としては

眼球の運動に合わせてアイトラッキングで網膜投影の軸を維持すること(MEMSを使って調整するのでしょうか。その後QDレーザはアイトラッキングの特許を申請してますね。)
より小型化し小さなチップとすることで装置を眼鏡に内臓してしまい(これは可能だとのことでした)旧型のレティッサ等についている外付けの箱(有線接続)を無くしてしまうこと

を挙げていました。今年2023年のCEATECにもTDKが出展するようなので改良版がみられるか期待しています。

将来性は?

会社が提示している市場規模を見る限りでは一定のシェアが取れれば将来性は期待できそうですね。ただハイテク分野は競争が激しく世の中の技術の方向性によってはせっかくの強みも即座に無力化されてしまうこともあるので注意が必要です。

飛躍の鍵は何といっても「光電融合」

QDレーザに注目する理由は何といっても量子ドットレーザが「光電融合」に関する基幹技術であるからではないでしょうか?光電融合というのはNTTが主体となって進めているIOWN構想に置いてキーテクノロジーとなる技術です。IOWN構想ではこれまでのようにコンピューターのチップの中で電気信号によって計算を行うだけでなく、光を直接シリコンチップに導入してしまい、光と電気が混在(融合)するコンピューターを作ろうという構想です。実現すれば小型化、経済化、高速化、低消費電力化が可能になります。


QDレーザがこのIOWN構想に本格的に参加できたり、現在QDレーザの量子ドットレーザを使用してチップに光を導入することに成功したAIO Core(アイオーコア)の製品が本格的に売れるようになれば大きく飛躍することも十分に考えられるのではないでしょうか?

またいずれは世界中のコンピューターのチップがこの光電融合技術を導入して置き換えられていくと考えられています。もし実現すればとんでも無い市場規模になるかもしれません。これからも要注目ですね。

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近未来のスマートな世界を支えるコミュニケーション基盤「IOWN(アイオン:Innovative Optical and Wireless Network)。現在2024年の仕様確定、2030年の実現をめざして、研究開発が進められています。
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