クリスパー・セラピューティクス(CRSP)

female scientist in white lab coat using a microscope 注目銘柄
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クリスパー・セラピューティクスってどんな会社

今回は私の好きなバイオ関連の銘柄になります。職業柄どうしてもバイオ銘柄に惹かれてしまうのですが、バイオはボラティリティが高過ぎて正直怖いという気持ちもあります。ただ過去に大勝ちした銘柄もやはりバイオですのでやめられませんねぇ・・・。

というわけで、今回は私の気になっている銘柄「クリスパー・セラピューティクス(CRSP)」について紹介します(以下CRSP社)。

CRSP社のホームページは下記のリンクからどうぞ。

Home Page

CRPS社は2013年に設立されたスイスに本拠を置きNASDAQに上場している企業です。フランス人のエマニュエル・シャルパンティエによって設立されました。エマニュエル・シャルパンティエはCRISPR/Cas9によるゲノム編集を可能にした業績で2020年にノーベル化学賞を受賞しています。

CRISPR/Cas9(クリスパー・キャスナイン)ってどんな技術?

細かな情報は専門書なり論文を読んでもらえばよいのでここでは簡単に説明します。CRISPR/Cas9とはひとことで言えば「DNAを任意の場所で切断・挿入できる技術」ということになります。そのような技術は従来から存在していたのですが、CRISPR/Cas9が画期的なのは簡便・安価にそれが実現できるということなのです。つまり「誰でも・安く・簡単に」遺伝子を改造できるようになったということです。

これには標的とするDNAを相補的に認識する(要するに狙ったDNAに上手くくっついて離れにくい)gRNA(ガイドRNA)とtracrRNAが使われます。これによりCas9(DNAを切断する酵素)が活性化され目的の遺伝情報を切断することができるのです。

切断されたDNAは通常修復されるように人間の細胞はできています。そこでその修復する仕組みをうまく利用して追加したいDNAを挿入するという流れになります。

CRSP社はその技術で何をしているの?

CRSP社はCRISPR/Cas9の技術を使って様々な治療を開発しています。主な開発領域は4つに分かれていて、①ヘモグロビン病(遺伝性の血液のヘモグロビンの病気)②腫瘍免疫学的治療③再生医療④生体内ゲノム編集となっています。

CRSP社はそれぞれの領域に於いて有力な企業と共同開発の形で開発を行っています。

それぞれの開発領域に関して外用を見ておきましょう。

①ヘモグロビン病

ヘモグロビン病は遺伝性の疾患で遺伝子の異常により起きていることが分かっています。β-サラセミアや鎌状赤血球症といった病気の治療に於いて遺伝子の異常部分を訂正することができれば病気が根治できるのではないかと期待されています。β-サラセミアと鎌状赤血球症に関しては既に臨床試験の段階まで進んでいます。

②腫瘍免疫学的治療

腫瘍免疫学的治療というとCAR-T療法が有名で癌細胞を免疫の力で退治してしまおうというもので近年非常に注目を集めています。既に実用化されているものも出てきていますが非常に効果で治療の準備に時間が掛かるなどの課題も指摘されています。

CRSP社もCAR-T療法を開発しているのですが、CRSP社のCAR-T療法は「allo(同種)」CAR-T療法として注目を集めています。これまでのCAR-T療法は患者自身のリンパ球を用いて治療する「auto(自家)」CAR-T療法でした。同種CAR-T療法は他人のリンパ球を用いることができるため治療のCAR-T細胞をストックしておくことができますし、血液腫瘍のようなリンパ球ががん化してしまうような病気でもCAR-T療法を行うことができます。同種CAR-T療法が実用化されればCAR-T療法が速く・安価に実施でき、治療効果も持続しやすいのでは?と期待されています。

③再生医療

CRSP社の再生医療は糖尿病をターゲットにしています。インスリンは膵臓のβ細胞から分泌されるのですが、CRSP社の遺伝子編集技術で幹細胞を操作し、免疫抑制を行わなくても拒絶反応の起きないようなβ細胞を作成・移植することを目指しています。こちらも臨床試験の段階に入っています。まずはⅠ型糖尿病から、そしていずれは患者数の多いⅡ型糖尿病へと広げていく予定のようです。

④生体内ゲノム編集

生体内ゲノム編集ではANGPTL3とLp(a)をターゲットにした治療が最も進んでいるようです。

増資のリスクは無いの?

CRSP社は2022年12月の時点で現金・現金同等物が約18億ドル残っており、今後2年間の経営に十分な余力があると2022年のannual reportに記載してるので当面は増資のリスクは低そうです。勿論経営上の判断によっては絶対はあり得ませんが。

ただ決算書を見る限りまだ毎年赤字ではあるのですが、ある程度の収入も継続して得ているため直近でバイオベンチャーにありがちな増資地獄ということは無さそうですね。

CRSP社は開発中の新薬が上市するようなことになれば大きく飛躍するかもしれません。これからも注目していきます。

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