ペルセウスプロテオミクスとは?
ペルセウスプロテオミクスは抗体医薬を開発しているバイオベンチャーです。東京大学先端科学技術研究センターの先端技術をもとに設立されました。一部創薬支援や抗体・試薬の販売も行っていますがメインは抗体医薬の開発です。
抗体はもともと体の中でリンパ球が作るたんぱく質で、抗体が細菌やウイルスまたはがん細胞などの標的(抗原)にくっつくことで免疫として機能し体を守っています。この抗体を人工的に作りだし、目的とする抗原にくっついて何らかの有益な作用を発揮するようにしたものが抗体医薬です。近年抗体医薬は様々な医療分野に応用されており、副作用が少なく効果が高いことからその開発が世界中で行われています。
ペルセウスプロテオミクスの事業概要に関しては会社側がマンガで分かりやすく解説してくれているのでこちらも参考にしてください。
以前は株価も200円台が定位置だったのですが、2023年に四季報で黒字化観測が報じられると、近々複数の新薬の導出の予定もあることも重なって株価は急騰。その後やや落ち着きを取り戻しつつあります(2024年2月時点で600円前後)。
ペルセウスプロテオミクスの強みは
ペルセウスプロテオミクスの強みは技術力にあります。抗体医薬の開発となると狙った抗原蛋白に上手くくっつく抗体の発見が重要になるわけですが、そのためのスクリーニング法を含めた高い技術を持っています。
ファージディスプレイ法やハイブリドーマ法に加えシングルBセルスクリーニング法などの技術を用いて目的とする抗体の探索を行っています。また特許を有するICOS法も抗体探索の効率化に役立っています。
パイプラインの進捗は?
パイプラインはどうでしょうか?ペルセウスプロテオミクスの場合、2024年時点で注目されているパイプラインはPPMX-T002とPPMX-T003の二つがあります。それぞれについて見ていきましょう。
PPMX-T003
PPMX-T003は抗トランスフェリン受容体抗体です。トランスフェリンとは体内で鉄を細胞に運ぶための鉄の乗り物のようなものです。細胞は鉄を取り込んで生きています。特に細胞の分裂には鉄が必要で、そのため分裂の速い細胞(がん細胞等)はより多くの鉄を取り込んでいることが分かっています。
細胞が鉄を取り込む際にはトランスフェリン受容体というところに鉄の乗り物のトランスフェリンがくっつくことが必要です。PPMX-T003はトランスフェリン受容体にくっついてこれを邪魔します。すると細胞は増えることが難しくなるのです。
この仕組みを利用して多血症(PV)やANKLの治療をテストしている段階ですが、理論的はその他の様々な癌(特に分裂の速い血液癌等)の治療にはPPMX-T003を利用できるのではないか?と期待できます。
真性多血症(PV)
真性多血症(PV)は血液の中の赤い粒(赤血球)が過剰に増える病気です。別に増えたっていいじゃないかと思われるかもしれませんが、あまりに過剰に増え過ぎるといわゆる「ドロドロ血」の酷い状態になり血管が詰まりやすくなったりしてしまいます。また一部の患者さんは白血病に移行したりします。
現在のところPVの治療は主に次のように行われています(①から開始し症状に合わせて④へ移行)。
①瀉血(月に1~2回。1回200~400mlの血液を抜いて捨てる)
②アスピリン(いわゆる血液サラサラの薬です)
③ハイドロキシウレア(抗がん剤の飲み薬です)
④ハイドロキシウレアが効かない場合、ルキソリニチブ内服
しかしながら瀉血の手間や通院頻度の問題、長期に渡る薬の内服に伴う副作用や2次発がんの問題もありあらたな治療法が求められていますがなかなか良い治療法が現れません。したがって世界中で新薬の開発が進んでいます。以下に3つのPV治療薬候補の導出事例を示します。
契約金・マイルストーンともに物凄い巨額の契約ですよね。PPMX-T003もこれらに近いくらいの導出契約になると良いですね。
2024年度の導出を予定しており間もなく導出される予定ですので契約条件と導出先に注目が集まっています。
ANKL
さて、PPMX-T003は様々な癌の治療に使えると考えられると前述しましたが、そのうちの一例がこちらのANKL(アグレッシブNK細胞白血病)になります。
ANKLは非常に予後不良な白血病で有効な治療薬が存在しません。発症するとおよそ半分のひとは2ヶ月以内に命を落とすと言われている病気です。
ペルセウスプロテオミクスのPPMX-T003はANKLの治療に有効なのではないかと期待されており、AMED( 国立研究開発法人日本医療研究開発機構)から多額の研究費が支給されることになりました。2023~2025年で2億6500万円の助成金です。ありがたいですね。
2024年度中にP1/2の臨床試験を終了し承認を目指しています。承認されればさらに他のがん治療への拡大を計画しており、急性骨髄性白血病・リンパ腫・固形がんが候補に挙がっています。実現すればすごいことになりそうです。
PPMX-T002
PPMX-T002は放射性同位元素をくっつけた抗体です。この抗体はがん細胞の表面に存在するカドヘリン3(CDH3)にくっつきます。したがってがん細胞に選択的に放射線を浴びせて破壊するという治療になります。
既にPPMX-T002はがん細胞に上手くくっついて集積するということが臨床的に確認されています。しかしこれまではイットリウム(Y)という元素を用いていたものを他の元素に置き換えてより効果を高めようということでルテニウム(Lu)とアクチニウム(Ac)で引き続き開発を継続しています。
こちらも2024年度中の導出を予定しています。
まとめ
ペルセウスプロテオミクスの概要を見てきましたが、導出が間もなくとされるパイプラインを2つもかかえており黒字化も間近と期待されています。現在株価は直近の急騰から調整中ですが安く仕込めるのであれば検討の価値があるかなと考えています。