IonQはアメリカのNASDAQに上場している量子コンピューターの会社です。会社に関する諸々の詳細をここで全て紹介することは不可能ですのでIonQのホームページリンクを貼っておきます。
量子コンピューターって何ですか?何がすごいの?
何かと話題の量子コンピューターですが何が凄いのでしょうか?量子コンピューターは名前からわかる通り原子や電子等の量子の性質を利用して計算を行います。量子の状態や性質は量子力学によって説明がなされていますが、量子特有の「量子重ね合わせ」や「量子もつれ」という性質を利用することで従来のコンピューターのような「0」と「1」のみによる計算ではなく超並列計算が可能になるとのことです。
量子の世界なんて難しくてよく分かりませんがいずれにしても特定の分野の計算においては従来のコンピューターと比較にならないほど爆速で計算ができるそうです(例:2,048 ビットの数字の素因数分解を見つけるには、古典的コンピューターでは何百万年もかかります。これに対して量子ビットでは、ほんの数分で計算を実行できます。)。
量子物理学的な話を深堀したい人はその手の専門書やネットの資料を思う存分漁ってみてください。ここでは細かな基礎科学的話はザックリとスルーします。
量子コンピュータは問題を解く方法の違いにより、量子ゲート方式と量子アニーリング方式の大きく2つに分類されます。
量子ゲート方式
量子ゲート方式は、量子状態にある素子の振る舞いや組み合わせで計算回路を作り、問題を解いていきます。
量子ゲート方式には超電導方式やイオントラップ方式があり、従来型のコンピュータの上位互換としての期待が高く、グーグルやIBMなどの大手ITベンダー、またリゲッティ・コンピューティングやIonQなどのスタートアップがハードウェアの開発を進めています。
IBM等が開発している超電導方式は超電導状態を作り出すために大型の冷却装置が必要となります。
これに対してIONQのイオントラップ方式では常温での量子コンピューティングが可能ではるかに小さなサイズの量子コンピューターが実現できるのが強みと言えるでしょう。日本では沖縄科学技術大学院大学(OIST)などがイオントラップ方式の量子コンピューターを開発しています。科学技術振興機構の「ムーンショット型研究開発事業」にも採用され、2050年に大規模な量子コンピューターの実現を目指すとしています。
量子アニーリング方式
量子アニーリング方式は、組み合わせ最適化問題を解くことに特化しています。高温にした金属をゆっくり冷やすと構造が安定する「焼きなまし」の手法を応用して問題の解を求めていきます。D-Wave Systemsが商用化に成功しているほか、日本ではNECが実用化を発表しています。
キュービット(量子ビット)とは?
ここで量子コンピューターを語る時に必ず出てくる「キュービット(量子ビット)」という用語について解説しておきます。キュービットとは従来のコンピューターでいうところのビットに当たるものです。従来のコンピューターのビットは0か1で表されます。量子コンピューターのキュービットは量子の性質により0または1または0と1の両方またはそれぞれの状態の重ね合わせといったように0か1以外の複数の状態をとることができます。従来のコンピューターが8ビット→16ビット→32ビット→64ビットと高性能化してきたように、量子コンピューターもキュービットの数が増えるほど高性能になっていきます。Googleは2029年までに100万量子ビットの量子コンピューターを開発する計画です。100万量子ビットは開発者達が考える汎用量子コンピューターの条件だからです。
IonQの将来性は?
IonQが注目されている理由はその顧客の顔触れや投資を受けている出資元の企業の顔触れが関係しています。Google、Amazon、ソフトバンク等がIonQに出資しています。またIonQは2022年にアメリカ空軍研究所と19億円の契約を結んだり、2023年にスイスの「QuantumBasel」 と共同で欧州の量子データセンターを設立する計画を発表しました。欧州への進出の足掛かりとなるでしょう。
イオンQの量子コンピューターは既に、米Amazon Web Services(アマゾン・ウェブ・サービス、AWS)の「Amazon Braket」や米Microsoft(マイクロソフト)の「Azure Quantum」といったクラウドサービスで世界中から利用できるようになっています。
またIonQは2023年にラックマウント型の量子コンピューターをデータセンター向けに発売すると発表しています。こちらも実現すれば業界に大きなインパクトを与えそうですね。
2023年9月19日に開催されたAnalyst Dayのプレゼンテーションでは詳細なスライドを配布しています。IonQのサイトから誰でもダウンロード可能です。
左の資料によると2025年には64キュービットのマシンが完成する見通しとのことです。64キュービットのマシンは現在のスーパーコンピューターの10万倍の規模の趣味レーションが可能と主張しています。
量子コンピューターというと、よく「誤り訂正」の課題が残ると聞きますが、IonQのPhaseⅡ世代では誤り訂正ではなく「誤り緩和」で商用で実用に耐えるものができるとのことです。
IonQは早期に3大クラウドでのサービス提供を開始してきたため現在商業ベースでの利用が増えています。
多くの企業がIonQの量子コンピューターをクラウド経由で利用し、それに伴って売り上げは増大し続けています。
さらに着々と世界中にIonQのパートナーを拡大し続けています。
まだ実証段階の競合達に比べてIonQの開発は既に商用向けの実用段階に入ろうとしており他者を大きくリードしているといえます。
量子ビットの数が増えるにしたがって計算能力は指数関数的に増えていくことになります。IonQは64量子ビットを2025年に達成する見込みとのことです。量子コンピューターが従来のコンピューターでは解決できな問題を解決できるようになる(量子超越性)のはもう近い将来かもしれません。
IonQの競合は?
量子コンピューター自体がまだまだ覇権争いの真っただ中にありますので、様々な企業が様々な戦略でその開発に参加しています。量子コンピューターの開発に取り組んでいる企業の一部を挙げるだけでも下記のように名だたる企業があがります。
・IBM ・Intel ・Alphabet ・Microsoft ・D-wave ・理化学研究所 ・富士通
上記の企業以外にも見方によっては競合となる企業は沢山あるでしょう。ただしIonQはその中でも独自の立ち位置を有する企業であり売上高を伸ばし続けている成長企業であることは間違いありません。今後の展開に期待しています。