バイオベンチャーは売るものがありません・・・
ビジネスの基本は何かを売ることですよね?業種によってそれが「モノ」であったり「サービス」であったりします。売って利益を出して会社を回す。これが基本のキであることは皆さん納得されるのではないでしょうか?
ところが、バイオベンチャーは売るものが無いのです・・・。これから売るもの(薬)を作りたいんだけど、そのためには何億、いや何十億、何百億とお金がかかるんだけどお金もありません。ベンチャーですからね。
考えてみてもください。「世界一のラーメン屋を作るよ!!できるかどうかは分からねぇけどな!!だが金は無い!!金は皆が出してくれ!!」って、こんな奴がいたら痛いですよね?でもそれがバイオベンチャーなのです。
一部のバイオベンチャーは研究試薬や分析サービス等を売って自前で現金を稼いだりしていますが、大抵は雀の涙です。
そこで必要なのが株主のあなた!あなたの財布が必要なんです!!
そんなわけで、バイオベンチャーは上場する目的としては「資金調達」を第一としていることが多いでしょう。株主からお金をかき集めるための上場ですね。売るものがありませんので許してやってください。
バイオベンチャーは大量にお金を使います・・・
バイオベンチャーはどれくらいお金を使うのでしょうか?これは会社の規模や臨床試験の規模にもよりますが年間数億~数十億使うなんてことは普通にあります。そうでなければ開発なんてできません。
「なんでそんなにかかるんだ?」って思われるかもしれませんが、研究をしたことがある方なら想像がつくと思うのですが、科学研究に使う器具や試薬って異様に高いですよね。精密でなければならなかったり、無菌でなければならなかったり、そもそも使う試薬が高額な特許権で守られていたりということで小っちゃな瓶に入った薬でも数十万円とか普通にあります。
加えて臨床試験をするとなると、臨床試験を委託するにも委託料が高額になります。自前でやろうとしたって解析のための作業も必要ですし人件費が馬鹿になりません。
ということで、バイオベンチャーは1円も稼げないくせに大金を湯水のように使い続ける。いつか新薬を開発できることを信じて・・・っていう夢だけ語って遊んでるミュージシャン崩れみたいな奴なんです。
資金調達はどうするの?
夢だけしかないバイオベンチャーがお金を稼ぐ手段は限られています。自称ミュージシャンやホストのように夢を語るだけのダメ男でもお金に困っていないパターンが世の中にはあります。どうしてそのようなことが可能なのでしょうか?
答えはパトロン(スポンサー)を見つけたからですね。夢を語るのが上手だと時々騙されて貢いでくれる女性が現れます。
バイオベンチャーの場合ですと貢いでくれる女性がつまり株主の皆さんということになります。バイオベンチャーの株主は地下アイドルの推し活をしているような状態なのです。ワロてまいますな。
それでは具体的にバイオベンチャーはどのように集金活動をするのでしょうか?
・新株発行(ワラント(新株予約権)、割り当て増資)
新しく株式を発行して投資家に買ってもらうことでお金を得る方法です。基本的に新しく株を発行するということは企業の価値が変わらないのにその所有権である株数が増えるということになります。ですから一株あたりの価値は減ってしまうことになります。株価が下落するということですね。これが「希薄化」と呼ばれるものです。
例えば時価総額100億の企業があったとします。現在1億株が発行されています。この時一株当たりの価値は「100億円÷1億株=100円/株」となり一株100円ですね。ここで資金を調達するために新たに新株を1億株発行したとします。合計で2億株になりますので一株当たりの価値は「100億円÷2億株=50円/株」となり一株50円になってしまいます。ですから新株発行は株価にネガティブな影響が出ることが多いのです。
それでは新株発行の形態を見ていきましょう
ワラント(新株予約権)
- ワラント(新株予約権)
ワラントとは新株予約権のことです。新株予約権とは「決められた期間内に、決められた価格で株を買うことができる権利」というものです。例えば現在株価200円の株があって、新株予約権に「今後1年間で一株100円で買える権利を1円で売ります」とあれば、1円でこの新株予約権を買ってもすぐに権利を行使して100円で株を手に入れ売ると「100-1=99円」がすぐに儲かるというものです。新株予約権を買ってもらったお金と権利を行使して株を買ってもらったお金の合計がバイオベンチャーに入金されます。既存の200円で持ってる株主には腹が立つことですけどね。 - ワラント債(WB)
前述のワラントが社債という再建にくっついてセット販売されているものです。ワラント債ではワラントを行使すると社債とは別に株式を購入しなければいけません。 - 転換社債(CB)
転換社債は社債なのですが、投資家が望めば株式に転換できる特殊な社債です。社債の安全性を持ちながら株価が急騰した際には株式に転換して高く売ることができるのが投資家にとってのメリットです。 - 行使価格修正条項付き転換社債(MSCB)
MSCBはバイオベンチャーでは非常によく見られる資金調達法です。普通の転換社債ですと株価が低迷していて投資家が転換社債を買った価格よりも低いと、株式に転換しても利益が得られず逆に投資家は損失を抱えてしまします。それを防ぐために株式に転換する際に株式を購入できる価格を株価に合わせて変動させるという条件が付いているのです。つまり株価が低迷していればより低い価格で株を買えるので投資家は損をしにくいというものです。したがってMSCBの増資が行われると転換した株が全て市場で売りさばかれるまではひたすら売り浴びせが降ってきて株価はさらに低迷します。信用買いをしている個人投資家などはこれに巻き込まれて追証や損切りとなるわけです。
第3者割り当て増資
その名の通り特定の第3者(取引先等)に有償で株式を買ってもらう方法です。
公募増資
その名のとおり現在の株主や特定の投資家に限定せずに広く買い手を公募して株式を買ってもらう方法です。
・銀行借り入れ
銀行借り入れを利用する場合もあります。銀行借り入れのメリット・デメリットを以下に挙げます。
メリット
- 新株を発行しないので株式の希薄化を招かないため株価に影響が少ない
- 希薄化が無いため既存株主の理解を得やすい
デメリット
- 借入金利に従って利息が発生する
- 返済しなければならない
ただし、銀行借り入れはある程度の信用や確実性が必要ですので、バイオベンチャーのようなリスクの高い事業では借り入れができることはあまりないというのが現実ですね。
・社債
社債は債権の一種です。債権というと国が発行する国債(地方自治体の公債もあります)、企業が発行する社債があります。債権は会社(国)が潰れない限り満期で償還されるのが特徴になります(10年債なら10年後まで持ってれば投資金額がかえって来ます)。
社債もひとつの資金調達手段ではありますが通常の社債を発行することはまずありません。そもそも社債自体が株式よりも安全なのが売りですが、バイオベンチャーの経営が安定していることはほとんどないのでより高い金利を払わなければならず、また購入側もリスクが高いため購入をためらうこともありそもそも成立しにくいですよね。ただしワラントの項目で説明した転換社債は頻繁に使われています。
資金源はあなたの財布です
以上がバイオベンチャーの資金源ということになりますが、ざっと見て分かった通り基本的にはバイオベンチャーの資金源は投資家の財布です。ですからバイオベンチャーにお金を貢ぐくらいのつもりで株を買って下さい。紙くずになることも多いでしょうが当たれば数十倍も夢ではありませんので。